あめの日散歩ブログ

同人誌の感想を書いていくかもしれないブログ

東方キャラ子供の頃合同 魅力的なテーマを扱った合同誌

 海苔缶さんが企画した東方子供の頃合同あの頃の私に参加させて頂いたので、せっかくならそれの感想を書こうと思う。

 数が多いだけに一つ一つの感想は短くなってしまうが許して欲しい。感想を書くのは難しく、大変なエネルギーと時間を使うのだ。

 それと今回は参加者に対しての感想というつもりで書いているのでネタバレを含んでいる。まだ読んでいない人は、今すぐ読んでから来い

 ではさっそくやっていくぞ。

 

(敬称略)

 

 追憶の魔女 海苔缶

 パチュリーが子供の頃に書いた日記を読み返し、自分でツッコミを入れているのが面白い。日記なのに書かれている内容が一言で、妙に淡白なのもクスリとさせられる。「お金がない」や「色々と面倒くさい」という一文に関しては、これ以上ないほど端的に全てを表しているので笑ってしまう。

 小悪魔が変態思考でパチュリーはだいぶ手を焼いているのだろうと伝わってくるが、なんだかんだでそんな小悪魔に好意を抱いているパチュリーはやはりいい。主従関係が良好なものはほっこりする。

 

 

 イラスト なまうに

 子供らしさがとてもうまく表現されていて可愛らしい。幼少期の早苗の純粋さが伝わってくる。

 

 

 ビッグキャンドル あめの

 私の作品。色々と粗はあるが、粗をなくすのではなく単純な面白さを追求しようと思って執筆した。読んでもらった人には高評価を頂いているので、うまくいったのではないかと思っている。最近オチでストンと落とすやり方に凝っているが、この作品のオチは自分でも気に入っている。

 

 

 気が合うかもしれない 仲村アペンド

 椛が文を苦手としているというルーツを、子供時代の経験と結びつけているのがとてもいいやり方だと感じた。なにげにその話を引き出しているのがはたてであるのもポイントが高い。天狗社会の文化や掟に触れつつも、椛と文の関係性に焦点を当てた話として、手堅くまとまっている印象。

 酒に酔って口が軽くなってしまった椛を想像すると可愛らしい。

 

 

 イラスト TaoMao

 絵本のようなイラスト。文章もついているのでそのまま絵本と言えるかもしれない。素朴なタッチがいい味を出している。

 

 

 ミレニアムカプセル 南条

 この人の書く話はかなり癖があるのだが、この合同においても相当に異質を放っている。藍が埋めたタイムカプセルを橙と一緒に掘り起こすという話なのだが、なぜかそんなほのぼのイベントであるにも関わらず、妙に殺伐としているのである。次の瞬間にも橙が藍の首を取ってもおかしくないと思わせる雰囲気がある。なのに、最後はなんだかいい話として纏まっているのが腹が立つ。

 こういうテイストはなかなかお目にかかれないので合同などでは他の作品と区別化できて貴重なのではないだろうか。

 殺伐としている以外にも、色々とツッコミどころが満載なので笑える話となっていて実に面白い。

 

 

 晩御飯前のほんの些細な出来事 ばかのひ

 この人もなかなか独特の世界観を持っている人で、基本的にはゆる~い世界なのだが時たまキャラがどうしようもなく毒のあるセリフを吐いたり、メタ的な視点から物事を言ったりするのが絶妙な面白さを生み出している。

 今回は地霊殿の話で、珍しくも地霊殿で一番のしっかりものとして描かれているのがこいしだったのが新鮮。また百パーセント自分が悪いと理解しつつ理不尽に怒るお空や、タンスの中から出て来るお燐だったり、ベッドの下から這い出すさとりだったり、可愛さと可笑しさが感じられてとても良かった。

 

 

 御神酒 桝本つたな

 一行読んだ時点でうまいと感じた。

 個人的に文章のうまさというのは情報掲示のやり方が大事だと思っている。もっと単純に言ってしまえばカメラワーク。

 この作者さんはものすごくそれを意識して書かれているというのを感じる。とにかく最初から最後まで尋常じゃないほど文章の流れが整理されていて、すごく読みやすい。難しい表現を扱わず、基本的にシンプルに書かれているのも個人的にはとても好みだった。

 

[危険な毒でも口に入れて確かめずにはいられない赤子のように、幻想郷の日常を楽しんでいる。]

 

 霊夢が早苗に対して抱いた印象を表現した文である。特にこの一文はいいなと思った。また、

 

[言霊の理も知らないのに、それこそ赤子のように軽率に、言葉を作っては弄ぶ。]

 

 外の世界が酒を禁止していることに霊夢が思ったことを表現した文章だが、先の文で扱った「赤子」というワードをここでも用いている。こういうのをさらっとやってのける技術力は恐ろしい。

 

 内容について。

 言ってしまえば、この話は、霊夢と早苗がお酒について話し合っている、だけなのだ。

 それだけなのに相当面白い。なんでこんな面白いのか正直わからん。誰か教えて欲しい。論理的これがこうなってこうだから面白いんだよというのを誰か。

 しかしここまで書いてほっぽりだすわけにもいかないので、ちょっとだけ書く。

 

 この話は一貫してお酒について書かれた話だが、以下のような流れがある。

 

 霊夢と早苗がお酒について軽い会話→霊夢の子供の頃の酒の思い出→宗教的な酒についてのやり取り

 

 と、このような流れになっているので、ほとんど霊夢と早苗が会話をしているだけの絵なのだが変化を感じ取ることができるようになっている。また地味に、二人が守谷の分社に移動しているので場所の変化もある。

 物語には変化を加えないと読者はだれてしまうので、こういう風に「酒」という一つのテーマを扱いつつも状況の変化を自然と取り入れられているのが面白さにつながっているのではないかと思う。

 また一つ一つのエピソードがキャラを感じさせるようなものになっており、特に宗教的な酒のやり取りの部分については、東方の世界観も感じさせる内容となっていてすごくそれらしい。物語のたたみ方もとてもうまい。

 セリフや行動といった細かい部分や、物語全体の流れを通して「ああ、霊夢ってこんな感じのキャラだよね」としみじみ感じさせられる。

 

 なんだか感想というよりは批評になってしまったような気もするが、それだけこの作品から感じたものは強かった。いいものを読ませて貰った。未読の人はぜひとも読んで貰いたい。

 

 

 三途の川のタイタニック号 アルトス

 小町が幽霊に三途の川を渡しながら子供時分の話を聞かせるというお話。小町がなぜ船頭をしているのかという理由に触れることができる。

 小町が幼少期から死神として稀有な才能を持っていたという珍しい設定が目を引いた。それだけにもう少しその部分を掘り下げても良かったかもしれない。

 それにしても、小町は幽霊を楽しませようという気持ちがあるのなら、サボりなどせずにもっと真面目に職務をこなして欲しいと思うばかりである。

 

 

 刀の思い マリファー

 幽々子のような主人を持つと苦労しそうである。特に真面目な性格である妖夢ならことさらに。ひたすらに思い悩む妖夢の姿が印象的。

 個人的に幽々子の「抜き身でいると風邪をひいちゃうわよ」というセリフがすごくそれらしくていいなと思った。

 

 イラスト 駄菓子屋

 ルーミアのイラスト。幼い顔立ちと禍々しい雰囲気が合わさって、いい不気味さがある。手に持っているそれ怖いんですけどなんですかそれ。

 

 

 My Precious Maid 渡辺稔

 咲夜の出自というのは非常に謎で、誰しも一回くらいは考えたことがあるのではないだろうか。紅魔館は多国籍軍なので本当に興味深い部分である。

 子供の頃レミリアと共に行く以外の選択肢がなかった咲夜だが、成長した今、もう一度自分の道を選ばせてみようと思うレミリアの姿が印象に残る。

 咲夜のことに対して真剣に考えるレミリアの姿がいいだけに、個人的な願望を言わせてもらうと、一人称でもっと彼女の心理に寄り添った話が読みたかった。

 主従の信頼の強さを感じられる点は大変に良い。やはり二人の関係はこうであってほしい。

 

 

 輝きを私に 東雲まひる

 真っ直ぐな魔理沙が魅力的なお話。

 濃密な描写力が作者さんの武器だろう。場所がどうなっているのか、魔理沙の格好はどうで、何をしようとしているのか、そういう一つ一つの要素をしっかり描写していて、はっきりと状況が伝わってくる。ここまで描きこめるのは素晴らしいと思う。

 最後の魔理沙が流れ星に祈るという行為、それ自体が成長して失ってしまったものを取り戻そうとする表れなのではないだろうかなどと考えたり。

 

 

 汚れなき嫉妬の橋姫 是雲公司

 パルスィの子供時代は、実は純粋でものすごく良い子だったというお話。それがどうして嫉妬に狂ってしまったのか……。

 純粋無垢なパルスィというのは今まで見たことがないので新しくて良かった。

 5000文字という容量ではどうしても描ききれない印象を受けてしまうが、書こうとしているものはしっかりと伝わってきた。

 

 

 五十分の一 小野秋隆

 一言、すごい。

 先程文章では情報掲示のやり方が大事だと述べたが、この人も相当にうまい。書き慣れている印象を直に受ける。とても格好いい文章で、こういうのを書けるのは羨ましい。

 内容についても本当に格好いいし、5000字という容量でここまで描き込めるのは驚愕。

 内容はアリスの二つ名「七色の人形遣い」、そのルーツは一体どこにあるのか、という話である。

 すごいな、と思ったところは、その「七色の人形遣い」という二つ名が一体どういう意味なのか、それをしっかり作者が独自の思考で精巧に作り上げていること。そして、そこからアリスがその二つ名にたどり着くまでの道筋を鮮明に作り上げていること。

 この二点が実に良くできているため、物語の重厚感がものすごい。たった5000字の容量であるはずにも関わらず、もっと長い話を読んだかのような満足感を得られる。

 

 読んでいて思ったのは、やはりエピソードが面白い話は面白い、ということ。

 この話のキーであるアリスの過去の部分。一言でまとめてしまえば「アリスが大事にしていた人形が捨てられてしまう話」である。こう言ってしまえばありきたりに聞こえるかもしれないが、そこに至るまでの過程で、アリスが人形に対してどのような思考を持ち、どのような行動を取ってきたか、尋常ではないほど事細かく描かれている。

 それによって「人形を捨てられてしまう」という一種のイベントが、アリスにとって並々ならぬ意味合いを持つことが良く伝わってくる。そしてそれが二つ名を持つ意味へと繋がっていく。

 だから面白い。

 

 総評として、純粋に読めて良かったと思った作品。作者の実力を感じさせる一作。

 (本当はもう少し感想を述べたかったが、ここまで十作以上書いてきてもう体力がない)

 

 

 イラスト ハルルカ

 子供の藍とお母さんしてる紫のイラスト。愛くるしい藍と、三十代前半シングルマザー夜は水商売に精を出し昼は子育てに奮闘中っぽさを感じる紫様の組み合わせがいい。

 

 

 ある幻想少女たちの宴会懐古談義 Gv.

 宴会の場で、霊夢が過去の出来事を語っていくのに対して、周りにいるキャラたちが茶々を入れるスタイルがなかなか面白い。

 作者が持っている幻想郷ないし霊夢への思いというものが、作品を通して伝わってくる。

 酒はみんなで飲んだほうがいいと霊夢が思っているのがいい。

 

 

 大きな嘘と小さな真実 ルミ海苔

 霊夢魔理沙の同世代の子供が里にはいない。それはなぜなのか、という謎が興味を引く。ホラー的な雰囲気が心地良い。

 実は霊夢はいたずらっ子である、というのはなかなかに可愛らしいのだが、ホラー要素が良かっただけに、そこを突き詰めて書いてみても良かったかもしれない。

 

 

 一寸光陰 キューネン

 詩的な文章で綴られる幻想的な情景が美しい。

 はっきりとしないんだけど、そのぼやけた印象がなんだかとてもいい雰囲気を作り出しているように思う。また、一定のリズムで書かれた文章が妙な味わいを出していると思った。

 この合同では他にないタイプのお話で、こういうのもいいね。

 

 

 イラスト TaoMao

 妖忌、幽々子妖夢の三人のワンシーン。妖忌の頑固さや幽々子の優しさ、まだ幼い妖夢のあどけなさが伝わってくる。三人の関係性がギュッと押し込められた一枚。

 

 

 まとめ

 今回、「子供の頃」というテーマを各人がどのように料理してくるのか非常に楽しみだった。傾向としては、キャラが現在持っている性質のルーツが子供時代にある、という手の話が多かったように思う。後はアイテムを用いて子供の頃を振り返るといったやり方。

 もしかして単純に子供の頃を描いた話って私の作品だけなのでは? ちょっと意外だった。

 合同のいいところは一つのテーマに対して、他の人がどういうアプローチをしてくるか比べることができる点で、この合同では参加者も多く、個人的にとても楽しむことができた。

 このような機会を与えてくださった海苔缶さんには多数の感謝を。

 そういうわけで、今回の記事はここまでにさせていただく。お読みくださりありがとうございました。